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担当:伊藤 楓
「子どもを生きればおとなになれる」
著者:クラウディア・ブラック
水澤都加佐 監訳 / 武田裕子 訳
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皆様こんにちは😊楓です。
「子どもを生きればおとなになれる」シリーズ⑲です。
前回のシリーズ⑲では、「自分を幸せにできる人になる」
についてまとめました。
今回のシリーズ⑳では
「秘密はいらない、役割はいらない」
について書いていこうと思います。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「家族の秘密/秘密が持つ破壊力」
▫️秘密が力をふるうのは、それが人を
コントロールするからです。
→問題は秘密にしようとする意図そのもの
ではなく、隠しつづけるためにとらなければ
いけない行動なのです。
▫️家族の秘密とは?
・クローゼットに隠された骸骨のようなもの
・誰か他人がその扉に近づきすぎないよう、
家族全員が監視の役割を負わされる。
・家族の秘密を守るよう強制される。
・子どもは家族の秘密を守るよう強制される。
・おとなになっても隠し続けることを自分に
強要する。
━━━━━━━━━━━━━━━
事実をありのまま認めることで、
秘密の破壊力はしぼみます。
中略
ただひとつの方法は、否認を終わらせ、
認め、クローゼットの扉をひらくこと。
それが秘密から自由になる唯一の道なのです。
━━━━━━━━━━━━━━━p170より
▫️秘密の影の中で暮らすこと
→恥辱と自己否定が土台にある家庭で育つということ。秘密が存在すること自体への否認に
支配されて育つこと。
・秘密の中身が特別に恐ろしいもの。
・とてもひどいことに見える場合もある。
・秘密を守ろうとする当人が、外見に非常に
こだわっている場合もある。
・家族の暮らしはまるで暗雲に覆われたかの
ようになる。
・家族が積極的に秘密を守ろうと共謀する。
・知らないうちに秘密と共に暮らしている人も多い。
・問題を秘密にしていると、私たちは理不尽な
行動に理屈をつけて耐えることにすっかり
慣れていきます。
・自分は普通の家庭で育ったと思いこんでいる。
・家の中のことに関しては口をつぐませような
雰囲気がある。
━━━━━━━━━━━━━━━
否認は真実の光をさえぎり、その影のもとでは
恥辱感の樹木が生い茂るからです。
中略
子どもは他のやり方があるというのを
知りません。
自分の家族だけが体験のすべてなのです。
何が「ふつう」だかわからない状態で
子どもたちは理不尽な仕打ちに耐えることを
身につけます。
体験したことを表現する言葉を持たないとき、
私たちはそれについて話すことができず、
その体験は秘密のままになるのです。
━━━━━━━━━━━━━━━p171より
⚠︎虐待されていることに気がつかない子どもがいます。
→身体的な虐待とは、げんこつで殴られたり
平手打ちされることだと思っている。
→髪の毛を持って引きづりまわされても虐待だと
知らない。
→壁際に押しやられるのが虐待だなんてわからない。
━━━━━━━━━━━━━━━
虐待というのは毎日のように起こるものと
思い込んでいて、月に一度だけの出来事には
なにかそれらしい理由を見つけ、秘密のままに
しておくのです。
━━━━━━━━━━━━━━━p173より
これは、虐待されている被害者である子ども
だけではなく、虐待している親も
「このぐらいは虐待ではない」と思い込み
秘密にしているケースも多くあります。
子どもを叩いたり怒鳴ることは躾の一環であり、
親の責任であると思い込んでいる親もいます。
(子どもが悪いことをしたらしかたがないよね等)
特に、日本は虐待に寛容な国です。
私たちも親にそうされてきたから、子どもにも
当然同じように躾(体罰)をする。
言葉で言っても分からないのならば、
体罰をすることは当然の権利だと言い張る大人
たちを見てきました。
殴る親が悪いのではなく、自分の言うことを聞かない
子どもが悪い、殴りたくてなぐるのではない
と正当化します。
感情を出せば「うるさい」と舌打ちや
足音、ドアを閉める音で子どもに恐怖を与えます。
次に著者はこのように説明しています。
▫️感情を表わせる雰囲気が家族や家庭にないと?
・痛みを否認する。
・本来の傷つきやすい自分を盾で防御する
ことを学ぶ。
・苦痛な体験もふつうのことだと
思いこむようになる。
「たった一度のことだし」
「親にはそんなつもりはなかったんだ」
・家族の仕打ちから物理的に身を守る手段がない。
・否認によって身を守るしかない。
・秘密を守ることになり、底に秘密があると
いうことさえ意識しなくなる。
・秘密を知られたら、自分は欠陥品のように
みなされ、「人より劣った」者として
見られてしまうと思い込む。
・真実を明らかにしてありのまま認めるのは
難しくなる。
━━━━━━━━━━━━━━━
自分が秘密を抱えて生きているかどうか、
どうやってわかるのでしょう?
ひとつの方法は自分にこう聞いてみることです。
「私のことや、家族のことで、人に知られたら
怖いと思うことがあるだろうか?
知られたら好きでいてもらえないとか、
友だちがいなくなるとか、仕事を失うのではと
不安になるようなことは?」
こんな聞き方もあります。
「相手の否定的な反応が怖くて誰にも言えずに
いることが、私には何かあるだろうか?」
もしあなたが特定の情報を漏らすことにこうした怖れを感じるなら、その情報はあなたの
人生を縛っているのです。
━━━━━━━━━━━━━━━p174より
私は、いまだに誰にも言えない
家庭内や施設内の秘密を抱えています。
その秘密を言えない理由は沢山あります。
体験否定や、自己責任論、感情のコントロール、
否定的な言葉からの自己否定感の一連の流れが
簡単に予測できてしまうことが一番の理由だと思います。
「そんなことが(平和な)日本である訳ないだろう…」
「何かの間違いでは?嘘をつくのはダメだよ…」
「それ、作ってない?」
「不幸自慢っぽいね」
「可哀想。でもあなたも悪いことしたからでしょ?」
「親は子どもを愛してるものだから
そんなことする訳がないよ…」
「そういう過去の話は場が暗くなるから
忘れた方がいいよ…」
「そんなに嫌なら記憶から消せばいいよ!」
「トラウマなんて存在しないよ。ただの思い込み」
「私の知ってる施設は虐待なんてないよ」
「子どもの頃の出来事は忘れなさい」
例えば、体罰を受け閉じ込められたことがある。
食事を抜かれたなどのおおまかな体験を
話しただけでも、上記のような言葉が飛び交います。
中高校生の頃は、助けを求めようとして
大人たちに話した結果、深く傷ついた経験から
本当に嘘をつくようになりました。
現実におきている虐待体験を必死に隠し、
施設に住んでいることを「恥」だと感じ
4人家族設定を作り、友達にまで必死に嘘をつきました。
体験否定、感情のコントロール、境界の侵入、
そんな社会で、家族、家庭、養育環境の秘密を
誰かに打ち明けるなんてとても出来ないなと
思っていたし、自分の最大の「恥」であり
「汚点」だと感じている出来事を誰かに
話すことは、本当に勇気がいることだと思うのです。
"もしあなたが特定の情報を漏らすことにこうした怖れを感じるなら、その情報はあなたの
人生を縛っているのです。"
私も著者の言葉通り、これまで自分の人生を
縛ってきましたが、
「この人なら聞いて貰えるかな?」
「この人なら話せそうだな」
と、思える理解者に回復のプロセスの中で
誰もが出逢えると思います。
自分で回復へ向け行動した時に、
同じ当事者仲間かもしれないし、理解ある
カウンセラーや医師かもしれないし、
パートナーや友達かもしれない。
体験を否定する人も多くいますが、
体験を理解し否定せずに聞いてくれる人もいます。
とにかく、自分の抱えていた家庭の秘密を
誰かに話してみようと思えた時が
その人のタイミングなのだと思います。
虐待された方、虐待されなかったけど
生きにくいなと感じている方、
多くの方に読んで欲しい一冊です。
自分に起きた出来事を整理整頓するワークも
書いてありとてもわかりやすい解説になっています。
しんどくて読めない方もいると思います。
私も中々開けずにいた一人です。
共有できる仲間と進むこともひとつの方法です。
経験上、ひとりぼっちにならずにつながることが
大切なキーとなると私は考えます。
孤独になり考えたい時、
仲間とワイワイ楽しくしたい時、
2人でお喋りをしたい時、
社会に訴えたい時、
様々な方法で色々な方々とつながる方法は
沢山あります。
他人にコントロールされることは、
自分の大切な時間を奪われてしまいます。
今回は、家族の秘密と秘密が持つ破壊力についてまとめました。
事実(虐待体験)をありのまま認めることで、
秘密の破壊力はしぼみます。
否認を終わらせ、認め、
固く閉めたクローゼットの扉をひらくこと。
このことを頭の片隅に置いておくだけで
誰かに話してみようと思える日が来ると
おもうのです。
本当に回復は時間がかかるものです。
ま、いっか!と笑える日が来ることを
想像もしていませんでした。
私は、誰かに秘密を話した時に自分の体験が
「恥」から「現実に起きた体験」として
受け止めることができると思っています。
シリーズ⑳を読んで下さりありがとうございます。
次回のシリーズ21では
「秘密はいらない、役割はいらない ~秘密の起源」
についてまとめています。
各シリーズの記事と合わせて読むこと
をおすすめします。
❁✿✾担当:伊藤 楓
毎週、月曜日と金曜日。月に計8回で更新しています ✾✿❁︎
-----------------------------٭•。❁。.*・゚ .゚
私たちが秘密の中で生きている限り、
他人と何かを分ちあったり人を信頼すると
いうことはできないでしょう。
過去の体験に縛られれば縛られるほど、
自己否定感はつのり、それを
不健康な行動で表すことが多くなるのです。
クラウディア・ブラック
―――
様々な本に出逢える幸せと
この記事を読んで下さる皆様へ感謝致します。
楓
-----------------------------٭•。❁。.*・゚ .゚・*.❁。.*・٭•。
【伊藤 楓:前回ご紹介した本】
「子どもを生きればおとなになれる」シリーズ①
「何を喪失したのか分からない」
→ https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/07/16/120000
「子どもを生きればおとなになれる」シリーズ②
子どもが「見捨てられる」
→ https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/07/19/120000
「子どもを生きればおとなになれる」シリーズ③「境界の混乱」
→ https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/07/23/120000
「子どもを生きればおとなになれる」シリーズ④「喪失が与える影響」
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/07/26/120000
「子どもを生きればおとなになれる」シリーズ⑤「現在の痛みのサイクルに気づく」
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/07/26/120000
「子どもを生きればおとなになれる」シリーズ⑥「痛みに対する感情の反応」
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/08/06/120000
「子どもを生きればおとなになれる」シリーズ⑦「痛みに対する感情の反応【激怒】」
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/08/09/120000
「子どもを生きればおとなになれる」シリーズ⑧「痛みに対する感情の反応【うつ】」
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/08/13/120000
「子どもを生きればおとなになれる」シリーズ⑨「痛みに対する感情の反応【うつの急性症状】」
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/08/16/120000
「子どもを生きればおとなになれる」シリーズ⑩「痛みに対する行動上の反応」
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/08/20/120000
「子どもを生きればおとなになれる」シリーズ⑪「痛みに対する行動上の反応」
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/08/23/120000
「子どもを生きればおとなになれる」シリーズ⑫
「自由への4つのステップ」
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/08/27/120000
「子どもを生きればおとなになれる」シリーズ⑬
「インナーアダルトを育てる」
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/09/03/120000
「子どもを生きればおとなになれる」シリーズ⑭
「核となる5つの力 ①自分を認める力」
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/09/06/120000
「子どもを生きればおとなになれる」シリーズ⑮
「核となる5つの力 ②コントロールをある程度手放す」
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/09/10/120000
「子どもを生きればおとなになれる」シリーズ⑯
「核となる5つの力 ③感情を感じる力」
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/09/13/120000
「子どもを生きればおとなになれる」シリーズ⑰
「核となる5つの力 ④ニーズを見分ける力」
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/09/17/120000
「子どもを生きればおとなになれる」シリーズ⑱
「核となる5つの力 ⑤ 限界と境界を設定する力」
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/09/20/120000
「子どもを生きればおとなになれる」シリーズ⑲
「自分を幸せにできる人になる」
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/09/24/120000
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「考える人とおめでたい人はどちらが幸せか」
シリーズ①「考えることを楽しめ!」
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/07/09/120000
「考える人とおめでたい人はどちらが幸せか」
シリーズ②「どうして学校に行かなければならないのか」
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/07/12/120000
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「世界最高の教室」シリーズ①
「生きる力をつける」
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/06/28/120000
「世界最高の教室」シリーズ②
「問題解決型学習」
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/07/02/120000
「世界最高の教室」シリーズ③
「自己主導性」
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/07/05/120000
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「新・子どもの虐待」
シリーズ①「子どもの虐待対応フレームワーク」について
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/06/04/120000
シリーズ②「エンパワメントとレジリアンシー」について→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/06/07/120000
シリーズ③「子ども観と子ども像」について
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/06/11/120000
シリーズ④「体罰の六つの問題」について
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/06/14/120000
シリーズ⑤「怒りの仮面」について
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/06/18/120000
シリーズ⑥「性的虐待の深刻さ」について
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/06/21/120000
シリーズ⑦「DVが及ぼす影響」について
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/06/25/120000
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「社会的養護の当事者が語る 前編 伊藤 楓」
〇エンパワーチャンネル2/2
「社会的養護の当事者が語る 後編 伊藤 楓」
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