こんにちは、くまたんです。
今回もジュディス・ヒューマンさんの
「わたしが人間であるために」を
ご紹介させて頂きます。
よろしくお願いします。
「 わたしが人間であるために 」〜シリーズ11
第四章 飛び立つ恐怖
◯前回のあらすじ
教職をしながらも週末は障害関連の政策に没頭していた著者。
ある日、504条項が公民権法であると気づき、それは著者たちが今まで受けてきた取り扱いが差別であったことを認めている内容であった。
504条項の法案は下院を通過したが、ニクソン大統領が拒否権を発動し、未署名のまま大統領の机の上に放置されていた。
拒否権の問題に関心を集めるため、著者たちは「米国ベトナム退役軍人」という組織を立ち上げたボビー・ミュラーに声をかけ共にデモ行動をし、メディアに取り上げられていく…
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ある日の昼下がり、電話が鳴った。
著者は二十七歳になっていた。
「ジュディ」
それはまるで毎日わたしに電話をしているような口調でエド・ロバーツと名乗る男性から電話がきたそうです。
「君の噂はたくさん聞いているよ。
こっちに引っ越してきて欲しい。
僕たちが一緒になれば、すごい変化を起こせると思うんだよね。」
著者はおもわず声をあげて笑ってしまったそうです。
「突然電話をかけて、予想もつかないようなことをお願いする、それはいかにもわたしがやりそうなことだった。
さすがに国を横断して引っ越してこいと頼んだことはなかったが(少なくとも、その時点では)」
この、熱い想いのぶつけあいからくる突拍子もないことを普通にお願いするという著者とエドのやりとりが私は好きだ。
心の底から差別をこの世からなくそうという決意が感じられるからだ。
ともあれ、エドは著者に目標を伝える。
「君に自立生活センター(CIL)に関わってもらうことだ。今僕たちがやっている活動に加わってくれるリーダーを探しているんだ。」と言う。
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CIL(自立生活センター)はDIA(行動する障害者たち)と同様エンパワメントに焦点を当てているが、障害者が自立した生活を送れるように政策的な運動とサービス提供の両方を行う。
p110より
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エドは自身もポリオで、使えるのは指二本だけであった。
カリフォルニア大学バークレー校に通う初の重度障害者で、キャンパス内で暮らす許可を得るために大学事務局と闘わなければならなかった。
そのあとわりとすぐ、他にも車いすユーザーの学生がやってきては、エドが住む学生寮に引っ越してきた。
その学生たちは「進む四肢マヒ者たち」と名乗り、身体障害のある学生のためのプログラムをバークレーで創設したりするなど、障害のある若い運動家が主なメンバーであった。
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わたしはバークレーで修士号を取るというアイデアと、「自立生活センター」という響きに魅了された。
教師としてわたしは修士号を取得する必要があった。
p111より
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とはいえ、著者はニューヨークから離れることを考えると恐怖に襲われたそうです。
今までこちらで積み重ねてきた安心、家族介助やルームメイトに介助料を払うことで得てきた、起床、着替え、就寝、トイレ介助などの支援体制をつくり、アパートでのひとり暮らしを成り立たせてきたのに、その支援体制を捨てることを考えるだけで、深い穴の中に落ちていくような気分になったと綴っています。
「自分はニューヨークを離れられないと思う」
著者はエドに率直な自分の気持ちを伝えた。
その時、エドはこう著者に答えた。
「ジュディ、それこそ僕たちがここでやっている活動の意味だよ。」
エドは著者が安心できるよう、バークレーでできる自立生活のすべてを話してくれた。
まとめると
・カリフォルニア州は障害者の介助者費用を負担してくれる。
→著者がニューヨークでしているようにルームメイトや友人に頼らなくて良くなる。(心身負担軽減)
・CILは自立生活に必要なことにアクセスする方法を教えてくれるコミュニティ
→アクセシブルなアパートの探し方。
車いすをどこで修理にだせばいいのか。
実際にどうやって介助者を募集し雇用するか。
これらをエドから聞いていくうちに著者は引っ越せるかもしれないと恐怖心が薄れていったそうです。
私はこのエピソードを読んで、このようなコミュニティはまず当事者の不安や恐怖心を知り、それを安心に変えていく方法を学び、利用者のニーズを第一に考えられる場所であることが何よりも大事だなと改めて思いました。
そう考えると日本の福祉や地域移行支援、自立支援の形は足りていないし、海外に比べて遅れているのを認めざるを得ないなと感じます。
いや、スタート地点にすら立っていないのかもしれません。
話を戻します。
著者は電話を切った後に家族や友人に起こり得るすべての可能性を考えた。
DIAを辞め、家族や友人と離れる。
しかし、最終的に、応募を決め、カリフォルニア大学バークレー校公衆衛生修士課程への入学が決まり、そのままリハビリテーション学部の奨学生に選ばれ、修士課程の学費も払ってもらえるようになったそうです。
この時、友人のナンシーにもこのことを話すとナンシーも引っ越しに乗り気になり、一緒に行くことにしたそうです。
のちに振り返って著者は、もし、この時にナンシーが一緒に来てくれなかったら、実行できたか怪しかったと回想しています。
カリフォルニアに到着すると、エド、CILの職員、バークレーの障害学生プログラムの人たちが来てくれて、カリフォルニアでの最初の数日間の面倒を見てくれる人も空港に出迎えて助けてくれたそうです。
当時のバークレーでは介助の仕事に敬意が払われており、介助者探しはそこまで大変ではなく、著者の望む特定のやり方で、特定の時間に介助する、という明確な業務内容を希望する人たちを面接し、雇用できたと綴っています。
この時、著者は
「不思議な、でも素晴らしい感覚だった。」そうです。
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その結果、いつ起きて、いつ・何を食べ、いつ寝たいかを、自分の都合で決められるようになった。
〜中略〜
自分ひとりで動き回る自由も手に入れた。弟や父に車で送ってもらうことに依存しなくても、友だちの家に行けるようになった。人生で初めて、車いすのまま乗車可能な車を持っている友人ができた。エドもそのひとりだった。
p113より
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CILは著者たちのアパートにあり、自然と人びとが集まり活動が生み出される土壌となっていたので、運動に参加したいという仲間たちが全米中から、集まってきていたそうです。
ここで、著者は今まで経験したことがないような出会いの嵐で、根っから外交的なわたしにとって、これがどれだけ良かったか、言葉を尽くしてもたりないくらいだ、と回想しています。
ここで担当アドバイザーになったヘンリック・ブルーム教授との研究を通じて障害者に関する著者のアイデアや目標はまったく理にかなっていると思えるようにもなった。
たとえば、アクセシビリティ、住居、教育、雇用などもこうりすべきだ、という概念にブルーム教授は賛同してくれ、「六〇歳以上のための診療所」という、組織の理事に著者を推薦してくれたそうです。
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理事としてわたしが行ったことの一つは、障害は加齢により生じる自然な現象だという考え方を伝えることだった。
だからこそ、人は年をとれば障害と共に生きることになるという現実を考慮し、みんなが地域で活動的でいられる環境をつくるべきなのだ。
p114より
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私はこれを読んで、障害とは事故や病気など特別なことが起きることが前提でどこかで考えてしまっていたことに気づかせてもらいました。
確かに、わたしも加齢と共に、関節痛や腰や肩を痛め、以前よりも可動域が狭くなり、痛みを伴うため、できることが減りました。
障害とは無縁と勝手に思い込んでいました。
年をとること=誰もが障害と共に生きることになるという現実がすっかり頭から抜けていました。
自分は大丈夫、自分はどこか特別だと思い込んでしまっていることこそが問題だと改めて感じたのです。
誰もがいつ病気をしたり、障害とともに生きることになるかなんてわからない。
誰もが安心して暮らせるように視野を広げ、一人一人が考えていけたら、もっと自分にも他人にも思いやりをもって接することができる社会に変わっていくのではないかと思いました。
まずは学び、知ること。
そして、行動。
その大切さを著者は本を通して私たちに教えてくれているように感じます。
次回、著者、ハリソン・ウィリアムズ上院議員の法務アシスタントになる。
飛行機で起きたこと。について書いていきます。
よろしくお願いします。
私は毎週、日曜と水曜を担当させて頂いております。
もし、今回の記事に対して何か感じる事がありましたら、ぜひ、皆さんの声もお聞かせ頂けたら幸いです。
最後までお読み頂きありがとうございました。
担当:くまたん
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過去記事のリンク
ぜひ、こちらも読んでみてください♪
シリーズ① 「チベットの生きる魔法」
"師からの助言"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/06/20/120000
シリーズ② 「チベットの生きる魔法」
"物事は悪くとってはいけないよ"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/06/23/120000
シリーズ③「チベットの生きる魔法」
"変化しないものなどない"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/06/27/120000
シリーズ④「チベットの生きる魔法」
"無我について"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/06/30/120000
シリーズ⑤「チベットの生きる魔法」
"苦、不満足について"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/07/04/120000
シリーズ⑥「チベットの生きる魔法」
"ただここにあることをまなぶ"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/07/07/120000
シリーズ⑦「チベットの生きる魔法」
"戦士のスローガン"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/07/11/120000
シリーズ⑧「チベットの生きる魔法」
"四つのかぎりない特性"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/07/14/120000
シリーズ⑨「チベットの生きる魔法」
"愛あふれる優しさ"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/07/18/120000
シリーズ⑩「チベットの生きる魔法」
"愛あふれる優しさ②"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/07/21/120000
シリーズ11「チベットの生きる魔法」
"思いやり"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/07/25/120000
シリーズ12「チベットの生きる魔法」
"トンレン"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/07/28/120000
シリーズ13「チベットの生きる魔法」
"心に響いた言葉"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/08/01/120000
シリーズ14「チベットの生きる魔法」完結
"偏見のない心で"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/08/04/120000
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シリーズ① 「死について41の答え」
"疑いを尊重する"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/08/08/120000
シリーズ② 「死について41の答え」
"疑いを信頼する"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/08/11/120000
シリーズ③ 「死について41の答え」
"信者ではなく探求者に"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/08/15/120000
シリーズ④ 「死について41の答え」
"人のことを考えるな"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/08/18/120000
シリーズ⑤ 「死について41の答え」
"この世から自由になる"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/08/22/120000
シリーズ⑥ 「死について41の答え」
"この世から自由になる②"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/08/25/120000
シリーズ⑦ 「死について41の答え」
"未知なるたび"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/09/01/120000
シリーズ⑧ 「死について41の答え」
"死は最後のタブー"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/09/05/120000
シリーズ⑨ 「死について41の答え」
"自分を犠牲にしない"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/09/08/120000
シリーズ⑩ 「死について41の答え」完結
"全世界を忘れる事だ!"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/09/12/120000
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シリーズ① 「わたしが人間であるために」
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/09/15/120000
シリーズ② 「わたしが人間であるために」
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/09/19/120000
シリーズ③ 「わたしが人間であるために」
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/09/22/120000
シリーズ④ 「わたしが人間であるために」
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/09/26/120000
シリーズ⑤ 「わたしが人間であるために」
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/10/03/120000
シリーズ⑥ 「わたしが人間であるために」
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