こんにちは、くまたんです。
今回もジュディス・ヒューマンさんの
「わたしが人間であるために」を
ご紹介させて頂きます。
よろしくお願いします。
「 わたしが人間であるために 」〜シリーズ14
第二部 一九七七年 バークレー・カリフォルニア
第五章 とらわれて
◯前回のあらすじ
DCに来て一年半、ふたたびエドから電話がかかってきた。今度はCILの副署長になってほしいとのことだった。
バークレーのCILにて新しいポジションに着くとDCでの経験が役に立ち、戻って正解だったと感じた。
著者二七歳の時であった。
こっそり法案に紛れ込ませた五〇四条項の施行規則を理解したこの法案の影響を受ける関係機関はロビイストを使い圧力をかけてきた、さらに有力者たちの圧力に屈した政府は署名を遅らせ続けた。
その間に政権はフォードから、カーターに代わる。
カーターは施行規則に署名させることを公約としていたが、結局署名するつもりなどなく、著者たちの堪忍袋の尾は切れ、全米でデモをすることを決意する。
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著者たちはまずは全米各地にある10個のHEW(保健教育福祉省)の建物を標的にした。
それはすなわち
DCにある本省、アトランタ、ボストン、ニューヨーク、ロサンゼルス、デンバー、シカゴ、ダラス、フィラデルフィア、サンフランシスコの九つの地域事務所であった。
著者はサンフランシスコでのデモの企画責任者だったため、CILが中心的な役割を果たすこととなる。
まずは組織化のため、委員会を立ち上げ「五〇四条項を護る会」を作り、委員長にキティ・コーンにお願いした。
キティは筋ジストロフィーの車いすユーザーで、コミュニティの動員に卓越していた。
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CILは何年もかけて力を蓄え、その頃には「基地」になっていた。
運動家を育て、他の人種団体のデモに参加し、彼らの主張を支持することで連帯を築き、介助制度についての運動を成功させ、アクセシブルな公共交通機関を求め、エドと一緒に全米でCILを増やしていった。
p130より
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ここまで準備を進めていても著者とキティは不安になったそうです。
それは二人とも、これまでの人生で何度も無視をされてきたこと、そのメカニズムもわかっていたこと。
政府はまた時間稼ぎをしながら世間の関心を薄れさせ待ちながら、非常に巧みに懐柔し、行動しているふりをする。
だが、今回はそうさせまいと著者は決意を固め、この正念場を乗りこえるため、抗議デモのレベルを一段階上げることにした。
これが、朝、出かける時に著者が下着一式を余分に詰め込んだ理由であった。
そして、デモの準備のため、サンフランシスコ連邦政府ビルへと向かった。
デモの準備は既に始まっていた。
キティは渉外(外部と連絡、交渉すること。)メディア対応、そのほか当日必要となるすべてのことに関して各班を率いるリーダーを任命していた。
キティは自らメディアに連絡。
メアリー・ジェーンは全団体に連絡し
ビラの配布のお手伝いのお願い、賛同団体に加わってもらえないかのお願いをしていた。
スティーブ・マクラランドは音響の指示をし、ジョー・クインは手話通訳を担当していた。
著者の彼氏のジム・ペチンも参加していた。
ジムは退役軍人であったが当初は障害はなかった。しかし、のちに糖尿病を発症し、枯葉剤に起因する健康問題を抱えることとなる。
「障害のある人たちへ、政府が私たちの公民権を奪い去ろうとしている!」
というスローガンも完成した。
著者はこの時、広場に続々と集まる人々を見て「すごい、私たちのスローガンはよかったのかも!」と思ったそうです。
その日は雲一つない晴天だった。
ここから怒涛のスピーカー(講演者)たちのスピーチが始まり、全員が次のスピーカーへとエネルギーをつなげていった。
次が著者のスピーチをする番の前に、キティがシュプレヒコールの口火を切った。
「五〇四に署名しろ! 五〇四を修正せずに署名しろ!」この声に呼応するかのように増える参加者たち。
ついに著者のスピーチが始まった。
子どもの頃から自分の権利を否定され、アクセシブルではなかった学校に入学を認めらなかったこと。
五〇四条項に署名がされれば、私たち障害者の完全かつ平等な社会参加を阻む壁を取り壊す、歴史的、象徴的な一歩になるということ。
この数年間、ルールに則って動いてきたこと。
施行規則を修正せずに署名すると言った大統領を信じたこと。
今までの思いが溢れだす。
意図的に署名を遅らせるカリフォノ長官を信じる理由などない。
ここに集まったのは「いい加減にしろ」と言うためだと訴える。
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「私たちは、あまりにも長い間待ち続け、あまりにも多くの妥協をし、我慢をしすぎたのです。」
「私たちは、もうこれ以上我慢しない。一切の妥協もしない。」
「これ以上の差別を、私たちは許さない」
わたしはそこで一度口をつぐんだ。そして、ほんの一瞬だけ聴衆のほうを見て、拳をつきあげ、シュプレヒコールを始めた。
「五〇四に署名しろ! 五〇四に署名しろ! 修正を加えることなく! 五〇四を修正なしで署名しろ!」
p137
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「素晴らしいスピーチだったね」
そう言って、エドはニッと笑った。
続いてエドのスピーチが始まった。
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「わたしを見て、みなさんが「できることは何か」を見出してくれることを願っています。他の人たちには「何ができないか」しか見えないのですから」
「そして、みなさんに伝えたい。私たちは人生でずっと、何ができて何ができないかを他人に決められてきました。でも、これだけは知っていてほしい。
ここで私たちがやろうとしていることは可能だ、ということを」
「私たちにとって何が正しいかを決めるのは、私たちだ」
p139より
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二人の魂の叫びの後、シュプレヒコールと大歓声が轟いた。
ここから、著者はHEWに行こう!と叫び、連邦ビルの入口に突進した。
皆が各々の方法で著者のあとに続いた。
そして、「ジョー・マルドナド局長に話し合いに来た!」と受付嬢に伝え、かなりの人数でマルドナドの部屋に入った。
著者は「私たちは、リハビリテーション法第五〇四条項施行規則の検討状況について聞くためにやってきました」と大きな声で言った。
部屋中がマルドナドの回答に注目し、静まり返っていた。
「五〇四条項とは、何のことですか?」
とマルドナドは答えた。
著者は驚き、言葉を失った。
「なんだって? 本気で言ってるの?」
マルドナドではらちがあかない。
著者は「五〇四条項の担当職員と話をさせてもらえませんか?」と聞く。
明らかに不快な表情をしたマルドナドだが、著者は止まらない。
しぶしぶ二名のHEW職員を連れてくるもこの二人もまったくもって何のことだかわかっていない様子。
再び、著者は説明したが結局、マルドナドも職員もいったい何を話しているのかまったく理解していなかった。
激しい怒りが著者の全身をかけめぐっていた。
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マルドナドにとっては、これは単なる仕事かもしれない。でも、その仕事には影響力がある。 マルドナドの事務所にいる全員、そして数百万人に影響することだ。
それを理解していなかっただと?
p144より
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この後、氷のような冷静さで、わたしはマルドナドを質問攻めにし、集中放火を浴びせた。
マルドナドは、今にも机の下に逃げ隠れそうだった。
「五〇四条項は、私たちの人生において不可欠です。」
「確約されるまで、私たちはここを動きません。」
自分の内側から、言葉があふれ出してきたそうです。
「あんたたちには、わからない。 あんたたちには、どうでもいい」
後押しするかのようにみんながシュプレヒコールを背後であげていた。
マルドナドは著者たちを睨んでから、立ち上がると、部屋を出て行った。
著者はキティに「わたし、どうだったかな?」と聞くと、キティは
「あんた、マルドナドを八つ裂きにしていたわよ」と笑って答えてくれたそうです。
次回、第六章 占領軍
連邦ビルに泊まり込むことを決めた著者を含めた七十五名の仲間たち。
著者たちはチームを再編成するために意気揚々とマルドナドの部屋に向かう。
部屋を占拠したデモ隊。
そのデモによって動揺するカリフォノ長官を書いていきます。
よろしくお願いします。
私は毎週、日曜と水曜を担当させて頂いております。
もし、今回の記事に対して何か感じる事がありましたら、ぜひ、皆さんの声もお聞かせ頂けたら幸いです。
最後までお読み頂きありがとうございました。
担当:くまたん
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過去記事のリンク
ぜひ、こちらも読んでみてください♪
シリーズ① 「チベットの生きる魔法」
"師からの助言"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/06/20/120000
シリーズ② 「チベットの生きる魔法」
"物事は悪くとってはいけないよ"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/06/23/120000
シリーズ③「チベットの生きる魔法」
"変化しないものなどない"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/06/27/120000
シリーズ④「チベットの生きる魔法」
"無我について"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/06/30/120000
シリーズ⑤「チベットの生きる魔法」
"苦、不満足について"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/07/04/120000
シリーズ⑥「チベットの生きる魔法」
"ただここにあることをまなぶ"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/07/07/120000
シリーズ⑦「チベットの生きる魔法」
"戦士のスローガン"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/07/11/120000
シリーズ⑧「チベットの生きる魔法」
"四つのかぎりない特性"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/07/14/120000
シリーズ⑨「チベットの生きる魔法」
"愛あふれる優しさ"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/07/18/120000
シリーズ⑩「チベットの生きる魔法」
"愛あふれる優しさ②"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/07/21/120000
シリーズ11「チベットの生きる魔法」
"思いやり"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/07/25/120000
シリーズ12「チベットの生きる魔法」
"トンレン"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/07/28/120000
シリーズ13「チベットの生きる魔法」
"心に響いた言葉"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/08/01/120000
シリーズ14「チベットの生きる魔法」完結
"偏見のない心で"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/08/04/120000
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シリーズ① 「死について41の答え」
"疑いを尊重する"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/08/08/120000
シリーズ② 「死について41の答え」
"疑いを信頼する"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/08/11/120000
シリーズ③ 「死について41の答え」
"信者ではなく探求者に"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/08/15/120000
シリーズ④ 「死について41の答え」
"人のことを考えるな"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/08/18/120000
シリーズ⑤ 「死について41の答え」
"この世から自由になる"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/08/22/120000
シリーズ⑥ 「死について41の答え」
"この世から自由になる②"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/08/25/120000
シリーズ⑦ 「死について41の答え」
"未知なるたび"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/09/01/120000
シリーズ⑧ 「死について41の答え」
"死は最後のタブー"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/09/05/120000
シリーズ⑨ 「死について41の答え」
"自分を犠牲にしない"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/09/08/120000
シリーズ⑩ 「死について41の答え」完結
"全世界を忘れる事だ!"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/09/12/120000
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シリーズ① 「わたしが人間であるために」
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/09/15/120000
シリーズ② 「わたしが人間であるために」
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/09/19/120000
シリーズ③ 「わたしが人間であるために」
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/09/22/120000
シリーズ④ 「わたしが人間であるために」
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/09/26/120000
シリーズ⑤ 「わたしが人間であるために」
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/10/03/120000
シリーズ⑥ 「わたしが人間であるために」
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/10/06/120000
シリーズ⑦ 「わたしが人間であるために」
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/10/10/120000
シリーズ⑧ 「わたしが人間であるために」
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/10/13/120000
シリーズ⑨ 「わたしが人間であるために」
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/10/17/120000
シリーズ⑩ 「わたしが人間であるために」
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/10/20/120000
シリーズ11 「わたしが人間であるために」
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