こんにちは、くまたんです。
今回もジュディス・ヒューマンさんの
「わたしが人間であるために」を
ご紹介させて頂きます。
よろしくお願いします。
「 わたしが人間であるために 」〜シリーズ12
第四章 飛び立つ恐怖
◯前回のあらすじ
ある日、エドという青年から一緒に活動をしよう!引っ越してきて!と初めての電話で言われて困惑した著者であったが、エドからバークレーで修士号を取るというアイデアと自立生活センター(CIL)という響きに魅了される。しかし、今の生活から離れることに対して大丈夫だろうか?と悩むが、相談した友人のナンシーが引っ越しに乗り気になったのでカリフォルニア大学バークレー校公衆衛生修士課程への入学も決まり、一路カリフォルニアに飛ぶ。
そんなある日、ハリソン・ウィリアムズ上院議員の上級法務スタッフのリサ・ウォーカーから事務所でお手伝いをしてもらえないかと電話がかかってきた。
----------------------------
著者はこの電話には驚かなかった。
なぜなら、事前に友人のラルフ・ホッチキスからウィリアムズ上院議員の法務アシスタントに推薦してよいかと確認の電話が数週間前にあったからだ。
著者は修士号を取得するうえで必須となる六ヶ月の実習先機関を探していたところであったため、バークレーが通信教育で単位取得を認めてくれるなら素晴らしい機会だと思ったそうです。
応募すると、すぐに採用されバークレーからワシントンDCへと再び引っ越した。
ここで、ウィリアムズ上院議員はどのような方なのかを紹介したいと思います。
-----------------------------------
◯ウィリアムズ上院議員
・議会において、障害施策に熱心に取り組む重要な議員のひとり。
・上院の雇用公共福祉委員長でもあり
著者が強い思い入れを持つ、二つの分野、障害者雇用と教育について実質的に変化を起こせる人物。
----------------------------------
DCでの生活はバークレーとは違い、CIL(自立生活センター)が作り上げてきたような介助者の紹介制度がなかったので介助者の確保が至難の業だったそうです。
当時はアクセシビリティの欠如と介護者不足によって人付き合いが難しくなっていたが、幸運だったことに大統領直轄の障害者雇用委員会で働く友人と一緒に住んでいたことだったと綴っています。
また、仕事場である国会議事堂では、電話をくれたリサ、そしてニック・エデスという上院雇用公共福祉委員会の上級スタッフで障害分野において大きな役割を果たしていた議会スタッフの2人と一緒に働いたそうです。
リサが著者に連絡をしてきた理由はふたりとも運動家との関係を強化したいと思っていたからでした。
著者はそこで五〇四条項チームに配属され、その動向を追っていた。
ここで五〇四条項が当時どのような流れになっていたのかをまとめてみます。
・著者がカリフォルニア時代にニクソン大統領が五〇四条項を含むリハビリテーション法にようやく署名する。
・その後、ニクソンがウォーターゲート事件にて辞任。
・このため、次の政権であるジェラルド・フォード大統領下の新政権に施行規則を作らせなければならない状況だった。
------------------------------------------
ウィリアムズ上院議員事務所ではその他の主要な課題や法律にも関わっており、障害児に質の高い教育をどう保障するかという議題の時に著者は意見を求められたそうです。
------------------------------------------
なんと!幼少期のあの傷だらけの経験を、子どもたちの人生を変える法律の立案に役立てられるなんて!
ワクワクする仕事だった。
わたしは丁寧な調整を心がけたが、筋は曲げなかった。
p117より
------------------------------------------
著者の喜びが溢れる文章にわたしも思わずワクワクしてしまいました。笑
著者は迷わず「養護学校は閉鎖し、障害児を通常学級に入れるべきです!」と訴えたそうです。
この当時、著者は多くの法律に関わり、幅広くさまざまな障害者団体の人たちや会ったこともないあらゆる人たちと出会い、それが、著者が物事を始めるうえでの豊かな土壌となっていったと綴っています。
この頃、著者は休暇で実家に帰省していた時、帰りのDC行きの飛行機である一件が起きた。
------------------------------------------
著者は飛行機が嫌いで、この日も憂うつな中、気分を落ち着かせるために、エリカ・ジョングの「飛び立つ恐怖」を機内で読もうと買っていたそうです。
いつもどおりにカウンターの女性にチケットを手渡すと、その日はなぜか止められたそうです。
それは何故かというと車いすの方はひとりでの搭乗を認めないというわけです。
著者は障害者の搭乗を禁止する規則など存在しないことを知っていました。
ちょうどそのとき、著者のバッグの中には運輸省が新しく提案中の規則のコピーが偶然入っていて、そこに著者のような人間がひとりで搭乗することを制限する内容の提案がされていたことも知っていたそうです。
つまり、現段階ではまだそのような制約条項は存在していませんでした。
結局、その女性職員の上司を呼び、らちがあかず、最終的に現れた男性職員が「ご搭乗になれます」と言い、当時の規則に則って父が機内まで来て介助し、乗ることができました。
しかし、著者はゲートにいた女性職員たちに対して強気に出たものの、自分が少し震えているのがわかったそうです。
------------------------------------------
こういうこと(映画館で通路をふさいでいると言われたり、レストランで店長があからさまに私たちの存在を迷惑がったり)が起きるとき、わたしはいつだってその瞬間は強くなれる。
でも、そのあとはいつも動揺し、怒りがおさまらないのだった。
p120より
------------------------------------------
この後、「搭乗になれます。」と言われたにも関わらず著者に対して再度、おひとりで搭乗することは認められていませんと言い出したのです。
理由はこうだ。
緊急事態に著者の手伝いをしてくれる方がいなければ降りてもらうしかない。と
著者はこう答える。
「緊急事態になったら、飛行機からの脱出に手伝いが必要なのはわたし一人ではありませんよね。」
「緊急事態になれば、みなさんは対応に追われ、わたし以外にも多くの乗客を手伝う必要が出てきますよ」
「わたしだけが特別ではありません」
さらに、客室乗務員は著者にこう伝えてきた。
「お客様、お医者様に機内に来ていただき、おひとりで旅行ができることを証明していただくことになります。」
著者はそれに対して、こう切り返す
「そうですね、乗客全員に対して健康診断をするというなら、異存はありません。」
わたしはこの著者の返答を読んでいて確かにその通りだなと目から鱗でした。
車いすだからではなく、非常時は皆、手伝いが必要になる。
車いすでない人でも、もしかしたら急に体調を崩す人もいるやもしれないではないか。
なぜ車いすだからというだけでこのような扱いをされなければならないのか。
「あなたが心配なのです。」
「念のために。」
このような善意からくる言葉や
優しさの皮をかぶった行動が当事者たちの尊厳を傷つける。
同意も得ずに一方的にされる「同情」のようなものは今もなお続く問題だと改めて感じました。
--------------
このような押し問答の末、数分後に二名の空港警察官が機内にやってきて著者に
「あなたを逮捕します。席を離れてください」と言ってきたのです。
この時の著者の頭の中は意外にもこのような反応だった。
------------------------------------------
「ワォ!すごいことになった!ついにわたしを逮捕することにしたわけだ。こういう差別があると訴える材料に使えるかも!」
p122より
------------------------------------------
その後、著者は飛行機をおろされ、身分証明書の提示を求められた。
この時、上院の身分証明書を見せると急に彼らは固まった。
上院に、お勤めですか?
どなたのもとで、お勤めですか?
そう、聞いてくる空港警察官に
ハリソン・ウィリアムズ議員のもとで勤めていることを伝えると彼らの顔色が変わり急に態度を変えてきた。
「あの、今回は釈放とさせていただきます」
著者はそうなると思ってた!とその時のことを綴っています。
その後、すぐにニューヨークでラジオ番組をやっているマラキー・マッコートに電話をかけた。
彼と妻のダイアンには障害のある娘がいて、障害児の権利援護に非常に熱心でした。
マラキーのおかげで、翌日にはこの飛行機でのできごとを伝える一本の新聞記事がでたそうです。
この後、著者は航空会社を提訴しました。
この時、判事は著者が過去にも頻繁に訴訟を起こしていたので、すべて意図的に仕組んだのではないか?と心ないことを疑われたそうです。
要するに、訴訟を放り投げ、今回のことは差別ではないと言ったことになります。
当時、著者が頼れる法律などなかったそうです。
五百ドルの賠償金にもならない裁判だとその時の判事は言ったそうですが、最終的にはより大きな額で和解したそうです。
第二部 一九七七年 バークレー・カリフォルニアを書いていきます。
よろしくお願いします。
私は毎週、日曜と水曜を担当させて頂いております。
もし、今回の記事に対して何か感じる事がありましたら、ぜひ、皆さんの声もお聞かせ頂けたら幸いです。
最後までお読み頂きありがとうございました。
担当:くまたん
-------------------------------------------------------
過去記事のリンク
ぜひ、こちらも読んでみてください♪
シリーズ① 「チベットの生きる魔法」
"師からの助言"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/06/20/120000
シリーズ② 「チベットの生きる魔法」
"物事は悪くとってはいけないよ"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/06/23/120000
シリーズ③「チベットの生きる魔法」
"変化しないものなどない"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/06/27/120000
シリーズ④「チベットの生きる魔法」
"無我について"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/06/30/120000
シリーズ⑤「チベットの生きる魔法」
"苦、不満足について"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/07/04/120000
シリーズ⑥「チベットの生きる魔法」
"ただここにあることをまなぶ"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/07/07/120000
シリーズ⑦「チベットの生きる魔法」
"戦士のスローガン"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/07/11/120000
シリーズ⑧「チベットの生きる魔法」
"四つのかぎりない特性"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/07/14/120000
シリーズ⑨「チベットの生きる魔法」
"愛あふれる優しさ"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/07/18/120000
シリーズ⑩「チベットの生きる魔法」
"愛あふれる優しさ②"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/07/21/120000
シリーズ11「チベットの生きる魔法」
"思いやり"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/07/25/120000
シリーズ12「チベットの生きる魔法」
"トンレン"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/07/28/120000
シリーズ13「チベットの生きる魔法」
"心に響いた言葉"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/08/01/120000
シリーズ14「チベットの生きる魔法」完結
"偏見のない心で"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/08/04/120000
----------------------------------------------------
シリーズ① 「死について41の答え」
"疑いを尊重する"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/08/08/120000
シリーズ② 「死について41の答え」
"疑いを信頼する"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/08/11/120000
シリーズ③ 「死について41の答え」
"信者ではなく探求者に"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/08/15/120000
シリーズ④ 「死について41の答え」
"人のことを考えるな"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/08/18/120000
シリーズ⑤ 「死について41の答え」
"この世から自由になる"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/08/22/120000
シリーズ⑥ 「死について41の答え」
"この世から自由になる②"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/08/25/120000
シリーズ⑦ 「死について41の答え」
"未知なるたび"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/09/01/120000
シリーズ⑧ 「死について41の答え」
"死は最後のタブー"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/09/05/120000
シリーズ⑨ 「死について41の答え」
"自分を犠牲にしない"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/09/08/120000
シリーズ⑩ 「死について41の答え」完結
"全世界を忘れる事だ!"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/09/12/120000
----------------------------------------
シリーズ① 「わたしが人間であるために」
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/09/15/120000
シリーズ② 「わたしが人間であるために」
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/09/19/120000
シリーズ③ 「わたしが人間であるために」
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/09/22/120000
シリーズ④ 「わたしが人間であるために」
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/09/26/120000
シリーズ⑤ 「わたしが人間であるために」
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/10/03/120000
シリーズ⑥ 「わたしが人間であるために」
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/10/06/120000
シリーズ⑦ 「わたしが人間であるために」
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/10/10/120000
シリーズ⑧ 「わたしが人間であるために」
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/10/13/120000
シリーズ⑨ 「わたしが人間であるために」
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/10/17/120000
シリーズ⑩ 「わたしが人間であるために」
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/10/20/120000
シリーズ11 「わたしが人間であるために」
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/10/24/120000
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
〇エンパワーチャンネル1/2
「社会的養護の当事者が語る 前編 伊藤 楓」
〇エンパワーチャンネル2/2
「社会的養護の当事者が語る 後編 伊藤 楓」
→ https://youtu.be/KTi7y8lQx8Y
〇エンパワーチャンネル→https://youtube.com/channel/UCifhmLrFFzWMz5Eq8mr-hTA
チャンネル登録よろしくお願いします✨
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
#Onlinetherapy #BookSalon #エンパワーチャンネル #empower Channel #尊重を学ぶ
#アコア #NPO法人アコア #コロナウィルス感染症:いのちとこころを守るSOS基金
#世界最高の教室 #虐待 #DV #面前DV