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こんにちは、くまたんです。
今回もジュディス・ヒューマンさんの
「わたしが人間であるために」を
ご紹介させて頂きます。
よろしくお願いします。
「 わたしが人間であるために 」〜シリーズ17
第二部 一九七七年 バークレー・カリフォルニア
第六章 占領軍 その3
◯前回のあらすじ
著者は記者会見の前にまず最初に、言葉の使い方をメディアに教育した。
無事、記者会見が終わったのも束の間、DCのデモ隊がカリフォノの策略により解散したことを知る。
仲間たちに一日単位で残ってほしいとお願いをしていく中、次の日、著者たちの最後の砦でもある連邦ビルも完全封鎖されつつあった。
協力団体に連絡をし、建物の外で抗議集会を決行してもらえる約束を取り付ける中、HEWが施行規則の検討を止めたという情報を知る。
全員が黙る中、さらに著者たちに追い討ちをかける情報が舞い込むのであった。
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間もなく、デンバーとニューヨークも投降したことが判明した。
介助者もおらず、アクセシブルなトイレもなかったそうだ。
カリフォノは、著者たちがバラバラになる寸前だと、より強く確信するに違いない。
著者はマルドナドの部屋に座り、みんなの暗い顔を見つめながら無力感と闘っていた。
そんな空気の中、渉外班のメンバーが飛び込んできた。
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「ブラウン州知事が私たちへの支持を表明したよ!施行規則に署名するようカーター大統領宛に手紙を書いてくれたんだ! 他にも、全労働組合、教会、権利援護団体が続々と賛同を表明しているよ! 全米農業労働者組合は支持を表明する電報を送ってくれて…あの、セサール・チャベスの署名まであったよ!」
私たちは、何を言っているのか理解できず、しばらく彼女を見つめていた。
そして、一斉に歓声をあげた。
p165より
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人々の関心が高まっていたのだ。
カリフォルニア州知事のジェリー・ブラウンも注目をしていた。著者たちの声に耳を傾けてくれた。そして賛同してくれたのである。
この時、パット・ライトが秀逸な戦略家として頭角を現し始めた。チェス盤の四手先が読める能力が主軸になっていくことがこの先の数年で証明されていくことになる。
著者たちはまず、カリフォノではなく、カーター大統領に直接働きかけることにした。
ロスのデモ隊は、残り35名でなんとか踏ん張っていた。
もし大統領に働きかけるなら彼らとの調整が必要だ。
著者たちの考えを伝えるために電話をした。幸いなことに、ロスのチームもこのアイデアに賛同してくれた。
著者たちはすぐにカーターの秘書室長になんとか電話で連絡をつけた。
室長に大統領との面会を求めると、もごもごと答え、折り返すと約束をした。
その対応に著者は「あまり期待できないな」と感じていた。
その時、デモ隊のみんなが会議室に列をなして入ってきた。
みんな、うす汚れ、みすぼらしい外見になりつつあった。
すべては、みんなにここに残ってほしいと説得できる力が、私たちにあるかどうかであった。
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この集団を維持するには、圧倒的な一体感をつくり出すしかないと確信していた。
そしてその唯一の方法は、誰ひとり残さず全員が参加できるようにすること、すべての情報をみんなと共有することだった。
p166より
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デモ隊全員が到着して、静かになったのを確認してから著者は話し始めた。
要約すると
・カーター大統領はこちらの立場を理解している。
・ホワイトハウスは私たちに電話を折り返すことになっているが、まだ電話はきていない。
・建物の封鎖は痛手だが、私たちの勢いは増している。
・ここ数時間で、全米中から関心が集まり、ブラウン州知事も先ほど賛同を表明してくれた。
・私たちはここを離れるわけにはいかない、他はたった35名で頑張っているロスチームだけであり、私たちが最大勢力であること。
「みなさん、一緒に残ってくれますか? 残れますか? 一日一日が、違いを生みます」
著者は心を込めて訴えた。
これまでと同様、みんなが残ることを約束してくれた。
この時、ブラッド・ロマックスという若者が「ブラックパンサーに連絡できるよ」と言った。
彼は著者たちが幾度となく連携してきたブラックパンサーのメンバーであった。
*ブラックパンサーとは
1960年代後半から1970年代にかけてアメリカで黒人民族主義運動・黒人解放闘争を展開していた急進的な政治組織。
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デモ隊のみんなは、急速な学びの途上にいた。
〜中略〜
「階段を上がれないのは、自分があるけないせいだ」と考える癖から抜け出して、「階段を上がれないのは、アクセシブルじゃないからだ」という考え方に慣れる必要があった。
p167〜168より
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部屋にエネルギーがあふれていれる様子は、誰の目にも明らかだった。
最後のひとりが言いたいことを言い終わるまで、私たちは会議を続けた。
結果的に125名のデモ隊全員が残ると約束してくれた。
しかし、問題はどうやって全員に食糧を行き渡らせればよいか見当もつかなかった。
幹部チームはマルドナドの部屋に再集結して、まずは水を飲んだ。
ハンガーストライキも三日目。
みな、水と時々ジュースを飲むくらいであったが、まったく疲れを感じなかった。
アドレナリンで走り続け、士気は常に高く保っていた。
カリフォノによって孤立させられた現状をどう打破するかを話し合った。
そこで思いついた。私たちには秘密兵器がある。
手話だ。
第一の秘密兵器、手話で支援者たちが抗議集会をしている広場に面した窓へと向かう。そして、声明やメッセージを窓越しに伝え、それを読み取った手話通訳者は、そのメッセージをしかるべき人たちに伝達するのだ。
それは「美しい光景だった。」
そして、第二の秘密兵器は、まったく予期していなかった方角からやってきた。
それはHEWだ。
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非常に早い段階から、私たちはHEWの職員や警備員には最大限の敬意と親しみをもって接することを固く決めていた。
この「お友だち作戦」がじわじわと効き始めていた。
私たちの立ち居振る舞いは、真っ当な主張とあいまって、次第にHEWで働く人たちから共感を得るようになっていた。
その日、100名の職員が私たちを支持し、カリフォノに嘆願書を送ってくれた。
p169より
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特に、HEWの地域局次長だったブルース・リーは、父親が全盲だったこともあり、カリフォノに署名させるようにマルドナドにプレッシャーをかけ続けてくれた。
ブルースは警告システムまで編み出してくれた。
彼が襟元のピンを逆さまにしたら、警備員が来るぞという合図であった。
これらすべてが、カリフォノの立場を切り崩していくことにつながっていった。
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その日の午後、デモ隊のひとりが転がり込んできた。
「ブラックパンサーが建物の中に力ずくで入ろうとしているよ!」
急いで廊下に出ると、ちょうどエレベーターのドアが開くところだった。
著者は目の前の光景を信じられずにいた。
六人のアフリカ系アメリカ人がエレベーターから降りてきた。
腕には大きなプラスチックケースを抱えていた。
「僕たちを中に入れず君たちを飢え死にさせるようなことがあれば、なんとしてでも、メディアにHEWを取り上げさせるぞって、警備員に言ってやったよ」
そして、そのうちの一人が著者に言った。
「夕飯と軽食を持ってきた」
ブラッド・ロマックスから連絡を受けたブラックパンサーは、フライドチキン、野菜、ウォールナッツ、アーモンドを抱えて建物に力ずくで侵入したのだった。
125名全員分の食事があった。
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みんなが集まってきて、驚き、しゃべり、笑い、手を叩き、歓声をあげた。
まるで、巨大な突風が帆を満たし、私たちを前へと押し出してくれたようだった。
ブラックパンサーは、その後もずっと、毎晩食糧を届けてくれた。
p170より
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「ジュディ! キティ!」
ジョニが部屋に駆け込んできた。
その時、著者たちはマルドナドの部屋で水を飲みながら、ブラックパンサーの訪問がもたらしてくれた束の間の安息を味わっていた。
ジョニは続けて
「警備員が、爆弾が仕掛けられているから全員建物から出るようにって!」
キティと著者はジョニを見つめた。
「うーんと、正確にはなんて言っていたの?」と著者が尋ねるとジョニは
黒い大きなブーツを履いた警備員が三、四人、ジョニに気づくと近寄ってきて、「建物から全員出しなさい。爆弾が見つかった」と言ったらしい。
爆発物探知犬のジャーマン・シェパードまで連れてきて、すごく警戒していたらしい。
キティと著者は顔をあわせて肩をすくめあった。
お互いに考えていることは同じのようだ。
あまりにもできすぎた話だった。
著者は「どうでもいいわ」と言うとジョニに「もう寝るね。爆発したら起こしてくださいって伝えておいて」と言った。
キティも続けて「そうね、わたしも」と言った。
わたしは個人的にここのジュディとキティのくだりがとても好きです(笑)
そして、同時に今更爆弾程度で逃げるような覚悟ではないという強いメッセージも感じました。
次回、第六章 占領軍 その4
温水を止められている中、冷たい水で頭を洗い、さっぱりとするジュディ。
そんな中、等々、残っていた最後の連絡手段であった二台の公衆電話も通信妨害され、誰も発信できなくなった。
デモ隊で踏みとどまっている最後の砦となった著者たち。
HEWの顧問弁護士のピーター・ライボッシとの電話での根比べが始まる。
次回もよろしくお願いします。
私は毎週、日曜と水曜を担当させて頂いております。
もし、今回の記事に対して何か感じる事がありましたら、ぜひ、皆さんの声もお聞かせ頂けたら幸いです。
最後までお読み頂きありがとうございました。
担当:くまたん
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過去記事のリンク
ぜひ、こちらも読んでみてください♪
シリーズ① 「チベットの生きる魔法」
"師からの助言"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/06/20/120000
シリーズ② 「チベットの生きる魔法」
"物事は悪くとってはいけないよ"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/06/23/120000
シリーズ③「チベットの生きる魔法」
"変化しないものなどない"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/06/27/120000
シリーズ④「チベットの生きる魔法」
"無我について"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/06/30/120000
シリーズ⑤「チベットの生きる魔法」
"苦、不満足について"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/07/04/120000
シリーズ⑥「チベットの生きる魔法」
"ただここにあることをまなぶ"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/07/07/120000
シリーズ⑦「チベットの生きる魔法」
"戦士のスローガン"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/07/11/120000
シリーズ⑧「チベットの生きる魔法」
"四つのかぎりない特性"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/07/14/120000
シリーズ⑨「チベットの生きる魔法」
"愛あふれる優しさ"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/07/18/120000
シリーズ⑩「チベットの生きる魔法」
"愛あふれる優しさ②"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/07/21/120000
シリーズ11「チベットの生きる魔法」
"思いやり"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/07/25/120000
シリーズ12「チベットの生きる魔法」
"トンレン"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/07/28/120000
シリーズ13「チベットの生きる魔法」
"心に響いた言葉"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/08/01/120000
シリーズ14「チベットの生きる魔法」完結
"偏見のない心で"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/08/04/120000
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シリーズ① 「死について41の答え」
"疑いを尊重する"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/08/08/120000
シリーズ② 「死について41の答え」
"疑いを信頼する"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/08/11/120000
シリーズ③ 「死について41の答え」
"信者ではなく探求者に"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/08/15/120000
シリーズ④ 「死について41の答え」
"人のことを考えるな"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/08/18/120000
シリーズ⑤ 「死について41の答え」
"この世から自由になる"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/08/22/120000
シリーズ⑥ 「死について41の答え」
"この世から自由になる②"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/08/25/120000
シリーズ⑦ 「死について41の答え」
"未知なるたび"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/09/01/120000
シリーズ⑧ 「死について41の答え」
"死は最後のタブー"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/09/05/120000
シリーズ⑨ 「死について41の答え」
"自分を犠牲にしない"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/09/08/120000
シリーズ⑩ 「死について41の答え」完結
"全世界を忘れる事だ!"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/09/12/120000
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シリーズ① 「わたしが人間であるために」
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/09/15/120000
シリーズ② 「わたしが人間であるために」
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/09/19/120000
シリーズ③ 「わたしが人間であるために」
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/09/22/120000
シリーズ④ 「わたしが人間であるために」
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/09/26/120000
シリーズ⑤ 「わたしが人間であるために」
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/10/03/120000
シリーズ⑥ 「わたしが人間であるために」
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/10/06/120000
シリーズ⑦ 「わたしが人間であるために」
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/10/10/120000
シリーズ⑧ 「わたしが人間であるために」
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/10/13/120000
シリーズ⑨ 「わたしが人間であるために」
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/10/17/120000
シリーズ⑩ 「わたしが人間であるために」
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/10/20/120000
シリーズ11 「わたしが人間であるために」
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