「生きる勇気と癒す力」P63 エレン・バス+ローラ・デイビス 三一書房より
癒しのさまざまな段階
以下のほとんどはサバイバーに共通するものですが
初期の危機段階、虐待を思い出すこと、家族との対決、許しなど、
全ての人に当てはまらないものもあります。
*自分を癒す決意
性的虐待が自分の人生に及ぼした影響を認めたら、こんどは進んで癒しを求める必要が生じてきます。深く癒されるには、癒しをしっかりと選びとり、自分を変えてゆく決意が必要です。
*第一の危機
抑えこんでいた記憶や感情を直視しはじめると、それまでの人生は大混乱に陥ります。でも、これは癒しの一段階にすぎず、永遠に続くわけではありません。
*記憶の糸をたぐる
サバイバーの多くは子供の時に起きたことの記憶を抑え込んでいます。
何が起きたかは覚えていても、その時の気持ちや感覚を忘れている場合もあります。
思い出すということは、記憶だけでなく気持ちや感覚を取り戻すことでもあります。
*それは本当に起きたこと
自分の感覚を疑うことがサバイバーにはよくあります。
実際に虐待を受けて、それが自分を深く傷つけたことを認めるのは
癒しのプロセスの核となる部分です。
*沈黙を破る
大人になったサバイバーの大半にとって、子どもの頃の虐待は秘密でした。
何が起きたかを語ることは、被害者に付きまとう羞恥心を払いのけ、
深い癒しに繋がる力強い行為です。
*自分のせいではなかった
子どもはよく、虐待は自分のせいで起きたと思い込みます。
大人になった今、性的侵害の責任は加害者本人に返しましょう。
*内なる子どもとの対話
サバイバーの多くは、自分の弱さを感じ取ることができないでいます。
自分の中の内なる子どもと繋がることで、もっと自分に共感と慈しみを持ち、
虐待者に対して怒り、他社との親密な関係が築けるようになっていきます。
*自分を信頼する
癒しにおける一番の案内役は自分の内なる声です。
自分の感覚や気持ち、直感を信じることは、
この世界における新たな活動のよりどころとなります。
*喪失を嘆く
子どものときに虐待を受けて成長した人の多くは、
自分が何を喪失したのかを感じるゆとりがありません。
喪ったものを嘆き、悼しむことは、自分の痛みを大切にし、
それを自分の手から放し、現在の自分をみつめる一つの方法です。
*怒りは癒しの支柱
怒りは強烈で開放的な力です。
虐待者本人、また自分を守ってくれなかった人に真正面から
怒りをぶつけることは、怒りをあまり感じてこなかった人にとっても、
いつもたっぷり怒りを貯めている人にとっても、
癒しの起点となることでしょう。
*打ち明け、対決すること
すべての人が、虐待者本人、また自分を守ってくれなかった人と真正面から対決できるわけではありませんが、これは往々にして劇的な精神浄化作用(カタルシス)を及ぼします。
*許しは必要か
虐待者を許すことは、よく勧められることですが、
これは癒しの段階に不可欠なものではありません。
真に許す対象がいるとしたら、それは自分自身だけです。
*精神世界ー魂の癒し
自分よりも大いなるパワーを感じることは、癒しの過程に
大きなプラスとなります。
魂の力を感じとるというのは、きわめて個人的な経験です。
それは伝統的な宗教、瞑想、自然の中で、
あるいはサポートグループに参加することで見つかるかもしれません。
*心の決着と前進
これらの段階を繰り返し通過するうちに、自分の中にある種の統合感が生まれます。
感情も視点も安定し、虐待者や家族に対して自分なりに気持ちの区切りをつけられるようになります。起きたことが消えるわけではありませんが、自分の人生により深く永続的な変化が訪れるでしょう。癒しを通して、高い自覚と共感と内なる力を得、より良い世界を築いていくことができるようになるのです。
「生きる勇気と癒す力」P63 エレン・バス+ローラ・デイビス 三一書