■ DVが与える心理的影響
PTSDとは「心的外傷(トラウマ)後ストレス障害」という意味の英語の頭文字をとったものです。
PTSDは強姦などの性暴力を受けた被害者に一番強く出るといわれていますが、DV被害者の後遺症もPTSDの症状として説明することができます。
主な症状は以下の3 つです。
●再体験症状 フラッシュバックといって、暴力を受けているシーンにもう1 回投げ込まれるような感じで経験するものです。
●過覚醒症状 過剰に覚醒して、神経が研ぎ澄まされ、びくびくしている状態です。
物音などに過敏になる人が多いです。
●回避・麻痺症状 回避というのは、自分がトラウマを受けた状況を避けるという意味です。
DV被害を受けた町に戻ることや、近づくことさえできない。
あるいは夫と同じぐらいの年格好の人を見るとドキドキする。
医師や警察の人と話をするのも恐いというような場合もあります。
麻痺というのは、
あまりにも恐すぎて、見ない、聞かない、感じないという風に固まっている金縛り状態です。
記憶がないというようなこともよく起きます。
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さらに虐待やDVの被害者は、長期反復する被害体験により「複雑性PTSD」といわれる症状に苦しめられます。
暴力を何度も繰り返して受けたために、PTSDよりももっと深いレベルでその人の人格にダメージを与えます。
これには次のような障害の種類があります。
●強いうつ状態で自殺願望があったり、自傷行為をしたり、あるいは怒りをコントロールできなくなってしまう「感情コントロールの障害」。
●自分であって自分でないような、どこか客観的に自分を眺めているような、離人、解離が起こるのが「意識状態の障害」。
●繰り返し「お前は駄目だ」などと言われ続けることによって、それが内面化されてしまい、自分が本当に人間としてだめだと思い込み、さらに進むと自分はどこかおかしいのではないか、と思うようになる「自己イメージに関する障害」などです。
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DV被害を受けた女性の7 割以上がPTSDになり、その中の2割ぐらいは自殺未遂の経験があるといわれています。
このような女性が受けた暴力は、「心理的攻撃」や「性的な強要」の度合いが高いことも報告されていて、身体的暴力がさほどないDVの場合でも、DV被害者にとっては多大なる影響が残ることを示唆しています。
■ 被害者から相談をうけたら
フェミニスト・カウンセリングと一般のカウンセリングとの一番大きな違いは、いま社会の中で女性がおかれている状況や立場に立って話を聴く、つまりあくまでもその被害者の方の立場に立って話を伺うということです。
もし あなたがDVの被害を受けている女性から相談されたときは、DVの被害によってPTSDなどのさまざまな症状を抱えてしまうことを念頭において、次のようなことが被害者によく伝わるように対応することが大切です。
・あなたの話を信じます
・あなたのせいではありません
・あなたはおかしくありません
・あなたはこれまで本当によく頑張ってきました
・私にどうしてほしいですか?
・またいつでも話を聞きます
最後に、DVのない社会を実現するために
いま私たちにできること
すべきことを考えてみましょう。
DVは、強い恐怖心を与えて力によって支配する関係のことです。
まず、DVに関する正しい知識を得ることが
何よりも大切です。
そして、DV被害者を苦しめる思い込みや偏見を改め 暴力の責任は加害者にあるという意識をもちます。
そのうえで、苦しんでいる被害者に対しての無関心を捨て、DV防止のために積極的な関心を持つことが求められます。
さらにそこから あなたができる範囲で支援の行動へとつなげる、、、
そうやって個の力を社会の力にすることで、
DV被害の根絶をめざしましょう。
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女性のためのウェルネスセミナー『DVを理解する~私らしくかがやくために』より