ひとりぼっちの裸の子どもが泣いている
ひぐれがしのびよる
小鳥が帰ってく
ここはどこだろう
たしかにみんなの近くにちがいないのに
ひとりぼっちの裸の子どもが泣いている
声もたてずに
だれが泣かしたの
きみたち私たち
きみたち私たち
おもちゃはちっとも役に立たないんだ
ひとりぼっちの裸の子どもが泣いている
孤児院はまっぴらだ
テレビもいらないよ
お金もほしくない
だれかがいっしょに歌ってくれさえすれば
ひとりぼっちの裸の子どもが泣いている
たき火をしてやろう
魚を釣ってやろう
くるみを割ってやろう
もひとり裸の子どもをさがしてやろう 』
谷川俊太郎『私が歌うわけ』より