『ルポ 児童相談所』
大久保真紀著/朝日新聞出版より
■キーワード「子どもの虐待死」
虐待で亡くなった子どもはゼロ歳児が最も多く、加害者の半数超は実母―――。
2003年7月から2016年3月までに発生した子どもの虐待死(無理心中を除く678人)を分析した社会保障審議会児童部会の専門委員会の第13次報告書からは、こんな傾向がみてとれる。
虐待で亡くなった18歳未満の子どもの年齢は、ゼロ歳(313人)、1歳(80人)の順に多く、5歳未満が8割超を占める。主な加害者は実母(374人)、実父(110人)、実父母(52人)の順。
実母の交際相手が加害者になったケース(36人)も少なくない。死因となった主な虐待の類型は、暴行などの身体的虐待(445人)とネグレスト(181人)で全体の9割超を占める。加害の動機については、第2次から第13次報告までの653人をみると、「保護を怠ったことによる死亡」(97人)、「しつけのつもり」(81人)、「子どもの存在の拒否・否定」(66人)、「泣きやまないことにいらだったため」(59人)などが目立つ。不明も194人と多い。
また、無理心中による虐待死は、354件486人にのぼる。
心中は日本独特とも言われ、海外では「殺人」ととらえることが多い。
日本でも、以前から「心中」と呼ばずに「母親の自殺と殺人」という認識をもつべきだと主張してきた研究者もいる。
虐待による死亡については、詳しい背景がよくわからない事例のほか、実際には虐待の可能性があっても見逃されて国の統計に含まれない事例も相当数あるとみられる。
このため、最近は、自然死以外で亡くなったすべての子どもについての情報を関係機関の多職種の専門家が持ち寄り、原因や背景を一例一例きちんと調べ、再発防止策を探る「子どもの死亡・登録検証制度(Child Death Review=チャイルド・デス・レビュー)」の必要性を唱える研究家や医師が増えている。