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こんにちは、くまたんです。
今回もジュディス・ヒューマンさんの
「わたしが人間であるために」を
ご紹介させて頂きます。
よろしくお願いします。
「 わたしが人間であるために 」〜シリーズ18
第二部 一九七七年 バークレー・カリフォルニア
第六章 占領軍 その4
◯前回のあらすじ
カリフォノからの圧力により、デンバーやニューヨークも投降していく中でジュディたちのチームも追い詰められていく。しかし、敵ばかりではなかった。
ジュディたちの行動を支持する者たちが続々と現れて来たのだ。
カリフォルニア州知事のジェリー・ブラウン、セサール・チャベス、全労働組合、教会、権利援護団体らが賛同を表明してくれた。
そして、戦略家として頭角を現したパットは狙いをカリフォノから直接カーター大統領に働きかけることにする。
さらに、秘密兵器が炸裂する。
手話とHEWで働く人たちへの最大限の敬意と親しみをもって接する「お友だち作戦」によって多くの支持者を得る。
100名の職員と地域局次長のブルース・リーがカリフォノに嘆願書を送ってくれたのだ。
さらにはブラックパンサーのメンバーが建物を力ずくで突破し食糧を届けてくれたのである。
今まで積み重ねてきたジュディたちの活動はここで一気に芽吹き始めた。
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子どもたちがイースターエッグを探し、外で力強いデモ行進が行われるなか、著者たちはHEWの顧問弁護士である。ピーター・ライボッシと電話で話していた。
ピーターの狙いは著者たちを建物から立ち退かせる方法はないか探るため、電話をかけてきたのだった。
ピーターのゴールはHEWとその仕事ぶりを信用して建物から出てくるよう著者たちを説得すること。
著者たちのゴールはピーターからできる限り多くの情報を引き出すことだった。
ピーターは自分は味方だと著者たちに思い込ませるためにいくつかの情報を共有せざるを得なかったが、その情報量は十分ではなかったため、かえって著者たちの決意をより強くする結果となり、あまつさえピーターは情報共有をし過ぎたため、HEW内での検討中の修正案について喋りすぎる失態を犯した。
その修正の中身は著者たちが望む施行規則からはほど遠い内容であった。
ピーターの話をパットやキティと一緒に聞いていると、何の前触れもなく、カリフォルニア州選出の下院議員であるジョージ・ミラーが部屋に入ってきた。
著者たちと同年代、当時まだ三二歳の彼は著者たちがDCの人間と話していることをすぐに察し、もう一台の電話へそっと向かい受話器を手に取った。
そして、静かにピーターの話を聞いていた。
「ピーター」
ミラーが話を遮った。
「下院議員のジョージ・ミラーだ」
ピーターは、不意に話すのを止めた。
著者はそのあとの二人の会話は正確に覚えていないが、ピーターはとにかく急いで電話を切った。
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ミラーは受話器を置くと、部屋にいる私たち全員のほうを振り向いた。
真剣な顔をしていた。
「残るんだ」
「この建物に残るんだ。勝つまでここを離れてはいけない」
翌日ミラー議員から電話があり、同じくカリフォルニア州選出の下院議員フィル・バートンと建物内で議会公聴会を開くことを決めたと伝えられた。
金曜日、一週間の終わりに。
「やったー!」
私たちは意気揚々と歓声をあげた。
大勝利だった。
議会公聴会は、議会が市民や専門家から証言を聞き、ある問題について何が起きているかを調査する手段だ。
議員たちが、ただ単に公聴会を、開くのではなく、「建物内で」開こうとしている事実は、私たちの問題について議会が誠意込めて関与を申し出る段階にまで、世間の関心を高めることに成功した証だった。
p175、176より
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この場面はこの本の中でも一、二を争うほどに大好きで胸躍る場面だったので、全て引用させて頂きました。
理解あり、かつ、力を持っている人がその力を正しく使ってくれた時の心強さと格好良さが十二分に表現されていて、わたしも思わずジュディたちと一緒に「やったー!」と思ってしまったほどです笑
わたしたちが望む政治家の姿とは正にジョージ・ミラーのような方ではないでしょうか。
「残るんだ」
「この建物に残るんだ。勝つまでここを離れてはいけない」
このセリフはあまりにも格好良くて、何度読んでも痺れます。
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第二部 一九七七年 バークレー・カリフォルニア
第七章 戦場の兵士
立てこもり開始からほぼ一週間が経ち、一日の決まった流れができつつあった。
午前中には班ごとに会議。
食糧班が食事の手配をし、医薬品班が必要なものをリストアップした。
ブラックパンサーからの温かい食事の差し入れに加え、バターカップ・レストラン、バークレー・ブリックハット・レズビアン組合、グライド・メモリアル教会
も食糧を寄付してくれた。
地域の薬局が、医薬品やその他の日用品を提供してくれた。
午後の遅い時間か夕方早い時間に全体会議を開き、建物の外で起きている出来事について把握している内容、現段階での戦略をみんなで共有した。
そして心がけていたことがある。
それは
・全員が揃うまで、手話通訳の準備が整うまで会議は始めない。
・最後のひとりが発言の機会を得るまで絶対に会議を終わらせない。
その結果、朝の三時まで会議が続くこともあったが、それは障害特性ゆえ言葉にするまで時間がかかる仲間がいたからであったし、何よりも真剣に取り組むべき問題を扱っていたからだ。
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私たちの全体会議で最も注目に値する点は、会議の長さではなく、それによって育まれた「聴く文化」だった。
〜中略〜
コミュニケーションをするうえでのニーズや各自のペースが尊重される空間、そんな自分たちだけの空間をつくり上げる力を、何よりも大切にしていた。
p178より
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デモ隊なひとりがのちに回想したとおり「私たちの日々の生活は、不快感と不安から成り立っていた」と言える。
著者たちの多くはリスクを承知で見知らぬ人に介助を頼っていた。
デモ隊のひとり、ビル・ブランチャードは「最初の何晩かは車いすに乗ったまま寝ました。そうすれば、見知らぬ人に移乗や頼みごとをする回数を減らせたからです」と回想している。
全員が、予備のカテーテル、呼吸器、その他の機器なしで過ごしていた。
万一のときにそれらが入手できないことは、著者たちにとって生死に関わる問題だった。
そんな中、立てこもっていたのだ。
生死に関わる障害をもっていない方々が立てこもるのとはわけが違う。
文字通り命がけだったのだ。
それでも、この厳しい環境をみんな楽しみ始めていた。
廊下で車いすレースをしたり、ゲームを企画したり、ギターを弾いて歌ったりした。
互いの絆は深まっていった…
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友情が生まれていた。
ある若い女性障害者は介助者に恋をし、人生で初めて自分のことを美しい存在だと思えるようになったと話していた。
〜中略〜
かの有名なジョージア州上院議員のジュリアン・ボンドなど、公民権運動のリーダーたちも訪ねてきてくれた。
ブラックパンサーもつるむためにやってきては、一緒に時間を過ごした。
ふたりの著名な心理学者が、障害とセックスに関するワークショップを開いてくれた。
p179より
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著者は何はともあれ七〇年代だったのだと回想する。
セックス、ドラッグ、ロックンロール。
ジェファーソン・エアプレイン、クイーン、イーグルス。
立てこもりはキャンプのときの感覚に似ていたかもしれない。
キャンプは、ニーズを抱えた自分でも上手くいく世界を生きた、人生で他にない時間だった。
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その頃、私たちを追っていた記者たちは、徐々に著者たちに魅了され始めていた。
エヴァン・ホワイト(サンフランシスコABCニュースの記者)は、車いすを借りてサンフランシスコの街で一日車いす体験をし、その経験を伝えた。
著者たちへの支持は、さまざまな方面から寄せられていた。
ワシントンDC、マディソン、ウィスコンシンのデモ参加者は、私たちへの敬意を示して夜通しの抗議集会を開いてくれた。
シーシー・ウィークスという、若く金髪の四肢マヒのメンバーは「障害者が本当の意味で実力行使に出るのはこれが初めてです。真の社会運動をつくっている感覚です」とテレビのレポーターに語った。
次回、第七章 戦場の兵士
四月十五日、金曜日。
立てこもり十一日目、議会公聴会の日。
ミラー議員とバートン議員が公聴会を開始した。
HEWを代表してDCから派遣された刺客、ジーン・アイゼンバーグとの闘いの火蓋は切って落とされた。
ここでも「分離すれども平等」というフレーズを口にされたことで怒りが爆発するジュディと仲間たち。
公聴会はどうなってしまうのか。
次回もよろしくお願いします。
私は毎週、日曜と水曜を担当させて頂いております。
もし、今回の記事に対して何か感じる事がありましたら、ぜひ、皆さんの声もお聞かせ頂けたら幸いです。
最後までお読み頂きありがとうございました。
担当:くまたん
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過去記事のリンク
ぜひ、こちらも読んでみてください♪
シリーズ① 「チベットの生きる魔法」
"師からの助言"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/06/20/120000
シリーズ② 「チベットの生きる魔法」
"物事は悪くとってはいけないよ"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/06/23/120000
シリーズ③「チベットの生きる魔法」
"変化しないものなどない"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/06/27/120000
シリーズ④「チベットの生きる魔法」
"無我について"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/06/30/120000
シリーズ⑤「チベットの生きる魔法」
"苦、不満足について"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/07/04/120000
シリーズ⑥「チベットの生きる魔法」
"ただここにあることをまなぶ"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/07/07/120000
シリーズ⑦「チベットの生きる魔法」
"戦士のスローガン"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/07/11/120000
シリーズ⑧「チベットの生きる魔法」
"四つのかぎりない特性"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/07/14/120000
シリーズ⑨「チベットの生きる魔法」
"愛あふれる優しさ"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/07/18/120000
シリーズ⑩「チベットの生きる魔法」
"愛あふれる優しさ②"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/07/21/120000
シリーズ11「チベットの生きる魔法」
"思いやり"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/07/25/120000
シリーズ12「チベットの生きる魔法」
"トンレン"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/07/28/120000
シリーズ13「チベットの生きる魔法」
"心に響いた言葉"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/08/01/120000
シリーズ14「チベットの生きる魔法」完結
"偏見のない心で"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/08/04/120000
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シリーズ① 「死について41の答え」
"疑いを尊重する"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/08/08/120000
シリーズ② 「死について41の答え」
"疑いを信頼する"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/08/11/120000
シリーズ③ 「死について41の答え」
"信者ではなく探求者に"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/08/15/120000
シリーズ④ 「死について41の答え」
"人のことを考えるな"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/08/18/120000
シリーズ⑤ 「死について41の答え」
"この世から自由になる"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/08/22/120000
シリーズ⑥ 「死について41の答え」
"この世から自由になる②"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/08/25/120000
シリーズ⑦ 「死について41の答え」
"未知なるたび"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/09/01/120000
シリーズ⑧ 「死について41の答え」
"死は最後のタブー"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/09/05/120000
シリーズ⑨ 「死について41の答え」
"自分を犠牲にしない"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/09/08/120000
シリーズ⑩ 「死について41の答え」完結
"全世界を忘れる事だ!"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/09/12/120000
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シリーズ① 「わたしが人間であるために」
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/09/15/120000
シリーズ② 「わたしが人間であるために」
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/09/19/120000
シリーズ③ 「わたしが人間であるために」
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/09/22/120000
シリーズ④ 「わたしが人間であるために」
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/09/26/120000
シリーズ⑤ 「わたしが人間であるために」
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/10/03/120000
シリーズ⑥ 「わたしが人間であるために」
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/10/06/120000
シリーズ⑦ 「わたしが人間であるために」
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/10/10/120000
シリーズ⑧ 「わたしが人間であるために」
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/10/13/120000
シリーズ⑨ 「わたしが人間であるために」
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/10/17/120000
シリーズ⑩ 「わたしが人間であるために」
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/10/20/120000
シリーズ11 「わたしが人間であるために」
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