こんにちは、くまたんです。
今回もジュディス・ヒューマンさんの
「わたしが人間であるために」を
ご紹介させて頂きます。
よろしくお願いします。
「 わたしが人間であるために 」〜シリーズ⑩
第四章 飛び立つ恐怖
◯前回のあらすじ
公民権に詳しい弁護士ロイと連邦裁判官に選出された初の黒人女性、モトリー判事と出会い、教育委員会との訴訟に勝った著者は教員免許を得て、母校の「ヘルスコンサベーション21」にて教師をすることになる。
今回はその教師時代、週末に障害関連の政策に没頭していた時のお話をしていきます。
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一九七二年、著者二五歳。
ニューヨーク市長室の障害者施策担当局長で友人のユニス・フィオリートさんから障害者の教育、職業訓練、雇用を支援するこの新しい法律について電話で著者に教えてくれました。
以前ご紹介しましたが、米国職業訓練局(通称「リハ局」)はLIU(ロングアイランド大学)での著者の学費を支援してくれていました。
しかし、著者たち、障害者にとって重要なプログラムではありましたが、その運営方法には多くの懸念があったそうです。
著者が週末に読めるようにユニスさんが法案を郵送してくれたので、職業訓練とサービスに関する条項をゆっくり読み進めると五〇四条に差し掛かった時に著者は衝撃的な箇所を見つけたのです。
それは…
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アメリカ合衆国において、第七条(6)で定められた障害のあるいかなる個人も、単に障害のみを理由として、連邦政府からの財政援助を受けている施策や事業に参加することから排除され、恩恵を享受することを拒否され、差別されてはならない。
p105より
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この文章は著者たちが受けてきた取り扱いがまさに差別であったことを認めていた文章でした。
そして、著者たちが言い続けてきたことを理解してくれた議員がついに出てきた事を意味します。
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入学拒否、教員資格を認められないことなど、私たちが日常的に直面するこれら無数の障壁は、何一つとして医学的な問題として片づけることはできないし、片付けては「ならない」ということを。
p105より
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著者の期待は膨れ上がり、議会には、私たちが直面している現状をただ学ぶだけにあらず、行動に移す気概のある人たちがいることを知った。
「差別」なんてものは存在しないと毎回言われ、そんなつもりではなかったとか、理解していなかったとか、どうすればいいかわからなかったと言われて水に流されてきたが、それは紛れもなく「差別」だったのだ。
この法律、法の対象は、連邦政府から予算を受けた機関に限定されていました。
しかし、著者が直面してきた教育、一部の雇用形態、住居、交通機関などの多くが対象になる。
ならば、DIA(「行動する障害者たち」)と協力団体が一緒になれば私たちはこれに取り組める。
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闘いは始まっていた。
私たちの声が、ついに届くのだ。
p106より
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一九六四年当時。
公民権法の場合は、法律の成立時はもちろんのこと、法案が提出されただけで、その過程や成果を歓迎する声明、スピーチ、記事が世の中に溢れていたそうです。
この五〇四条項も障害者の公民権法として、同様の期待感をもって迎えられたと思うかもしれませんが、この法案に公民権条項があることはまったく話題にもなっていなかったそうです。
わたしは先程の流れからとてつもないムーブメントが起きていたのだろうと思って読み進めていましたが著者が知る限りでは
この法律は公民権法だ、その形式や形態、何らかの理由からそうみなされる、とは誰も言っていなかったのだそうです。
著者は自分たちの問題が無視されることに慣れすぎていて、驚きもせず、最初から期待すらしていなかったと綴っています。
ちなみに、後になって、五〇四条項は
誇るべき数人の上院議員による水面下の工作の成果、つまり、もとは障害者雇用に重点をおいた法案に(公民権法を改正することなく)公民権条項を忍び込ませる方法を、上級スタッフに見つけさせた成果だったことを知ったそうです。
だからこそ、表向きには公民権法だ!と気づく人がおらず、著者だからこそ気づけたことだったのだなと思いました。
つまりはそれくらい巧妙に上手に自然と条項に入れることが可能なことを証明したといっても良いと思います。
ここから、著者は全ての内容を完全に消化するやいなや次の一手をすぐに打ちます。
DIAの理事たちに電話をかけ、何をすべきか議論し、法案の審議状況を追いかけ始めたそうです。
(当時のメンバーは八十名ほどで、とても活発に活動をし、主に作業所の閉鎖、アクセシビリティの向上、テレビにおける否定的な障害の取り上げ方の三点について、それぞれが部会をつくって明確な目標を定めていた。)
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法案は下院を通過したが、ニクソン大統領が拒否権を発動し、未署名のまま大統領の机の上に放置されていた。
拒否権の問題に関心を集めるため、私たちはデモ行動をすることにした。
p107より
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このとき、ニクソンは再選に向けて立候補中だったため、格好のターゲットとなり、まず始めはマンハッタンにある連邦政府ビルに五十名ほどで押しかける講義運動をした。
残念ながら、そこでは何も起こらなかったが、現れた警察にニクソンの選挙対策本部の場所を聞くと住所を教えてくれ、対策本部はマディソン・アベニューにあることが判明した。
ここで、講演の動画内で著者が質問した、「何人いれば、マディソン通りの交通を止めることができますか?」
「答えは50人。
一人では足りません。
車椅子用の犯人護送車なんてなかったので取り締まるのは大変でした。」(笑)
という流れがとても印象深く、本を読んでいて、「この時のことだ!」とつい声をあげて、もう一度動画を見返してしまいました。
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私たちは対策本部へと車いすを走らせ、マディソン・アベニューのど真ん中へと突き進んでいった。
四車線すべてを封鎖すると、車やトラックが私たちに向かってクラクションを鳴らした。
〜中略〜
そこで、一車線だけ占領することにしたのだが、それでも大渋滞を引き起こすには充分だった。
誰も取材には来ていなかったが、夕方の交通情報で報道された。
p108より
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著者たちは大統領選の前日にもデモをすることにしたそうです。
ベトナム戦争の退役軍人も仲間にすべく、「米国ベトナム退役軍人」という組織を立ち上げていたボビー・ミュラーに連絡をすると一言
「とうとう自分よりぶっ飛んでいる人間に出会ったよ」
ボビーはニクソンの選挙対策本部をめざし、タイムズスクエアを一緒に行進しながら著者にそう言った。
私はこのエピソードがとても好きで、ボビーのユーモア溢れる著者への言葉がとても素敵な褒め言葉だなと感じました。
著者は、ボビーたちと行進デモをすることでメディアにもう少し取り上げてもらえるかなという期待をし、実際に多少はその通りになったそうです。
学校で教壇に立ちながら、週末は会議を開き、仲間を集め、デモをする日々。
これが、著者が教員免許を取得してから数年間の日常だったと綴っています。
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次回、二七歳になった著者の家に知らない男性から突拍子もない電話がかかってきたことで「自立生活センター」という組織と出会った話を書いていきます。
よろしくお願いします。
私は毎週、日曜と水曜を担当させて頂いております。
もし、今回の記事に対して何か感じる事がありましたら、ぜひ、皆さんの声もお聞かせ頂けたら幸いです。
最後までお読み頂きありがとうございました。
担当:くまたん
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過去記事のリンク
ぜひ、こちらも読んでみてください♪
シリーズ① 「チベットの生きる魔法」
"師からの助言"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/06/20/120000
シリーズ② 「チベットの生きる魔法」
"物事は悪くとってはいけないよ"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/06/23/120000
シリーズ③「チベットの生きる魔法」
"変化しないものなどない"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/06/27/120000
シリーズ④「チベットの生きる魔法」
"無我について"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/06/30/120000
シリーズ⑤「チベットの生きる魔法」
"苦、不満足について"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/07/04/120000
シリーズ⑥「チベットの生きる魔法」
"ただここにあることをまなぶ"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/07/07/120000
シリーズ⑦「チベットの生きる魔法」
"戦士のスローガン"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/07/11/120000
シリーズ⑧「チベットの生きる魔法」
"四つのかぎりない特性"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/07/14/120000
シリーズ⑨「チベットの生きる魔法」
"愛あふれる優しさ"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/07/18/120000
シリーズ⑩「チベットの生きる魔法」
"愛あふれる優しさ②"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/07/21/120000
シリーズ11「チベットの生きる魔法」
"思いやり"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/07/25/120000
シリーズ12「チベットの生きる魔法」
"トンレン"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/07/28/120000
シリーズ13「チベットの生きる魔法」
"心に響いた言葉"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/08/01/120000
シリーズ14「チベットの生きる魔法」完結
"偏見のない心で"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/08/04/120000
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シリーズ① 「死について41の答え」
"疑いを尊重する"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/08/08/120000
シリーズ② 「死について41の答え」
"疑いを信頼する"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/08/11/120000
シリーズ③ 「死について41の答え」
"信者ではなく探求者に"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/08/15/120000
シリーズ④ 「死について41の答え」
"人のことを考えるな"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/08/18/120000
シリーズ⑤ 「死について41の答え」
"この世から自由になる"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/08/22/120000
シリーズ⑥ 「死について41の答え」
"この世から自由になる②"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/08/25/120000
シリーズ⑦ 「死について41の答え」
"未知なるたび"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/09/01/120000
シリーズ⑧ 「死について41の答え」
"死は最後のタブー"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/09/05/120000
シリーズ⑨ 「死について41の答え」
"自分を犠牲にしない"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/09/08/120000
シリーズ⑩ 「死について41の答え」完結
"全世界を忘れる事だ!"
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/09/12/120000
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シリーズ① 「わたしが人間であるために」
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/09/15/120000
シリーズ② 「わたしが人間であるために」
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シリーズ③ 「わたしが人間であるために」
→https://npoacoa.hatenablog.com/entry/2021/09/22/120000
シリーズ④ 「わたしが人間であるために」
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